「ベトナム駐在、すごいですね!
「活気があって、毎日が刺激的でしょう?」
日本にいる同僚や友人から、そんな言葉をかけられることはありませんか。若き日に思い描いた海外勤務。その夢が叶い、発展著しいこの国で大きな責任を背負っている。その事実に誇りを感じながらも、あなたは心の奥で、誰にも言えない思いを抱えてはいないでしょうか。
——ベトナム駐在は、決して“華やかなことばかり”じゃない。
むしろ、赴任当初の喧騒が落ち着き、すべてが“日常”に変わった頃、ふいに心を蝕む「しんどい時期」が訪れるものです。
今回は、特に「ベトナムで孤独を感じている駐在員」や、「日本本社と現地の板挟み」に悩むあなたへ、この国で戦う一人の日本人として、心を軽くするヒントをお伝えできればと思います。
なぜ、ベトナム駐在は「しんどく」なるのか?
赴任したばかりの頃は、目に映るすべてが新鮮でした。エネルギッシュな街の喧騒、日本では考えられないバイクの数、陽気なベトナムの人々。言葉や文化の壁さえも「面白い」と前向きに捉えられていたはずです。
しかし、生活が“非日常”から“日常”へと変わった瞬間、じわじわと「違和感」や「孤独」が正体を現します。
- 日本と同じ常識が通用しないことへの苛立ち
- こちらの意図が、なぜかベトナム人スタッフに伝わらないもどかしさ
- 「駐在員」という立場で、本音を吐き出せる相手がいない
- 日本にいる家族や友人と、気軽に会うことができない距離
- どれだけ頑張っても、拭いきれない「外国人」という感覚
特に、会社の代表として、あるいは責任者として現地に乗り込んでいるあなたにとって、この孤独や違和感は、想像以上に重くのしかかります。
プライドが蝕まれる瞬間
「もうベトナムも長いですし、慣れたものでしょう?」
そんな風に言われることも増えてくるかもしれません。しかし、日本にいる年老いた親のこと、キャリアを中断させて帯同してくれた妻のこと、現地の学校に馴染もうと頑張る子供のことを思うと、ふと「自分はここで何をしているんだろう」と虚しさに襲われる夜はないでしょうか。
そして、仕事においても…。
日本では当たり前にできていたことが、ここでは上手くいかない。ローカルスタッフとの間に見えない壁を感じ、本社からは成果を求められる。その板挟みの中で、感謝されるどころか、時に疎まれていると感じることさえある。
「管理職として来ているのに、誰も動いてくれない」
「決定事項が、いつの間にか覆っている」
「『YES』と言ったのに、全く進んでいない」
そんな経験の積み重ねが、知らず知らずのうちにあなたの自信を削り、プライドを蝕んでいきます。
家庭では「良き夫、良き父」として、会社では「有能な駐在員」として。その役割を全うしようとすればするほど、「自分個人」の存在が消えていくような感覚に陥るのです。
「こんなに身を粉にしているのに、何のためだ?」と。
心を立て直す、5つのアクションプラン
そんな八方塞がりな状況から、少しずつ前を向くために、私自身が実践してきた5つの行動をご紹介します。
① 「役職」を脱いで話せる仲間を見つける
部長でも、マネージャーでもなく、「一人の個人」として話せる相手を見つけること。それは、同じようにベトナムで奮闘する、利害関係のない他業種の駐在員かもしれません。あるいは、ゴルフやフットサルといった趣味の仲間かもしれません。
「うちのスタッフも同じだよ」「その気持ち、痛いほどわかる」
そんな共感の一言だけで、孤独感は驚くほど軽くなります。リアルで会うのが難しければ、オンラインでも構いません。弱音を吐き出せるセーフティネットを持つことが、何よりの支えになります。
② 思考を「日本語」で書き出し、客観視する
頭の中がベトナム語と日本語でごちゃ混ぜになり、思考がまとまらない。そんな時は、母語である「日本語」で感情を書き出すことをお勧めします。
スマホのメモでも、手帳でも構いません。何にイライラしているのか、何に不安を感じているのかを“文字にする”ことで、自分の感情と冷静に向き合えます。「なんだ、こんなことで悩んでいたのか」と、問題が整理され、解決の糸口が見えることも少なくありません。
③ これは「異文化サバイバル」と捉え直す
カルチャーショック、部下との衝突、交渉の失敗…。それらは、あなたの能力不足が原因なのではなく、いわば「ルールの違うゲーム」に挑戦している証拠です。
これは「心の筋トレ」ならぬ「異文化サバイバル」なのだと割り切ってみましょう。ベトナムの商習慣や国民性を理解し、どうすればこのゲームを攻略できるか、と視点を変えるのです。
そして、小さな成功体験を意識的に積み重ねること。
「難しいと思っていたスタッフを、上手く巻き込めた」
「今日の商談は、ベトナム流の交渉術で乗り切った」
経済的な安定は会社によって保証されている駐在員だからこそ、こうした「仕事の達成感」が、精神的な自立と自信に直結します。
④ 自分を甘やかす「ベトナム時間」を確保する
毎日、ほんの少しでもいい。「自分を癒やす時間」を意図的に作ってください。
例えば、いきつけのローカルカフェで、バイクの往来を眺めながら cà phê sữa đá
(ベトナム式アイスミルクコーヒー)を飲む。仕事帰りに、馴染みの日本食屋で一杯やりながら店主と話す。週末に、家族とは別行動で一人でVIPマッサージへ行く。男の疲れは風俗で解決できる事が結構多いのです。
日本のドラマを見たり、Kindleで日本語の小説を読んだりするのも良いでしょう。意識的に「日本」と繋がる時間、あるいは「ベトナム」の喧騒から離れる時間を持つことで、心の回復力は格段に上がります。
⑤ しんどい時は、誰かに「頼る」
プライドが邪魔をして、弱みを見せられない。特に責任感が強いあなたほど、一人で抱え込みがちです。しかし、本当にしんどい時は、我慢せずに誰かに「頼る」勇気を持ってください。
信頼できる同僚や上司、あるいは会社が提供するカウンセリングサービスでも構いません。心の重荷を言葉にして吐き出すだけで、視界が晴れることは本当にあるのです。
最後に伝えたいこと
ベトナムでの生活がしんどいと感じるのは、あなたがこの国で「真剣に生きている証拠」です。
誰もが「日本にいたら、もっと楽だったのに…」と思う日もあれば、すべてを投げ出して帰りたくなる夜もあります。
それでも、今日までここで戦ってきたあなたは、間違いなく強く、前に進んでいます。
大切なのは、その辛さを放置せず、「何が自分を苦しめているのか」を具体的に見つめること。そして、その苦しみを和らげるための具体的なアクションを、一つずつ試してみることです。
あなたの味方になってくれる人、心を休める習慣、ホッとできる場所。それらを一つでも多く、このベトナムで見つけてください。
◆あなたへの問いかけ
- 最近、仕事や家庭の役割を忘れ、自分のためだけに時間を使えていますか?
- 役職や立場を気にせず、本音で話せる相手は、ここにいますか?
- あなたがベトナムに来た当初、本当に成し遂げたかったことは何でしたか?
この記事が、今まさに奮闘しているあなたの心を、少しでも軽くするヒントになれば幸いです。
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